いろいろな経営観

 先日、全く別の業界の経営者とお話をしていて、「いろいろな経営観があるものだなあ」と思わざるを得ない経験をしました。その方もまだ30台半ばの若くて、しかも非常に真面目に自社の経営をしっかりしていらっしゃる3代目社長さんでした。この厳しい時代において業績も好調ということです。私とも境遇も良く似ているんですね。まず子供の頃から自分の親の会社を継ぐんだ、という気持ちで学生時代、社会人のキャリアを考え行動してきたこと。またオーナー家というものと会社では、会社を優先すべきだ、と考えている点。さらに社員がこの会社で働くことで少しでも幸せになって欲しい、と心から願っている点。

 こういうベーシックな考え方が一緒ゆえ、非常に話は盛り上がったんです。「そうですよね!」ということがたびたびありました。しかし問題は最後の部分なのです。これからどうするか、というお話においては全く逆の結論となってしまったのです。

 彼は「会社をこれからもっと成長発展させるためには、私が経営していては駄目なんです。だからこの会社を発展させてくれる実力のある会社に100%株を買ってもらおうと思っています。その上で私は社長を退任します。」というお話なんですね。「へええ!」と思いました。彼は自分の人生を賭けようと思って準備してきて、今立派にその役割を果たしているように見えるのですが、「それでは駄目なのだ。社員のためにはもっと優れた経営者、経営母体が必要なんだ。」というのです。

 私の頭の中は????だらけになりました。彼はまだ30台半ばですから、社長を引いてしまえば彼の人生はどうなるのかなあ、と心配になりました。そしてオーナー会社の文化でオーナー家が持つ求心力というものも失われてしまうのは経営的にも社員から見てもプラスなんだろうか?とも思いました。そしてもしその100%株を買ってくれた新たなオーナーが期待した通りの経営者ではなかった場合、社員は不幸になるんではないだろうか、とも。

 でも彼の決意は堅かったです。私も上記のようないろいろな質問をしてみました。それに対しても彼は一つ一つ丁寧にこれまで考えに考え抜いてきたことをうかがわせるような返答をくれました。そこで私は「うーむ、なるほどいろいろな経営観があるものだ。」と思わざるを得なくなってしまったのです。

 私は社長として社員に対して「大きな責任」というものがあると思っています。これを果たすために頑張っていると思っています。その大きな責任とは、まず経営を継続させ雇用を守ること。そしてさらに発展成長し、社員の成長にも寄与することなのでしょうか。その時に私はそれを自分がやるべきだ、と当たり前に考えていました。自分以外の人間がはくばくという会社のこの職に当たるときは、自分が経営者としてふさわしくないという事態が生じたときだ、と思っています。私はこれがその責任の取り方だと思っていましたが、彼の場合それよりもっと自分の実力を冷静に見つめ、さらに会社の発展成長を真剣に考えている、ということなのでしょうか?

 私は最後に彼に対して「でも本当に貴方がその大切な会社を売り渡すにふさわしい経営者が現れなかった場合、貴方が経営をやるしかないですよね。きっとそれは天がまだ貴方に経営をしなさい、と言っているのではないでしょうかね。」と申し上げて帰ってきました。その言葉に彼も「それはそういう覚悟もできています。」と言っていました。彼がこれから選らばれる買収企業がどんな会社なのか、それに注目したいと思いました。その企業の質が本当に彼が自分の人生よりも、会社を最優先したという証になるのだろう、と思うからです。私は密かにそういうピッタリくる企業が現れないと思っていますが・・・・。

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プロフィール

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株式会社はくばく
代表取締役社長
長澤重俊

1966年ひのえうま生まれの45歳。
東京大学ラグビー部卒。(本当は経済学部)
住友商事を経て1992年はくばく入社。
趣味はゴルフとワインかな?
今年のヴァンフォーレ甲府がJ1で大活躍することを心から期待しています。