信用のコスト

 最近起きた元厚生労働事務次官夫妻の殺害事件。これによっておそらく多くの宅配業者さんが苦労しているだろうなあ、と思っています。テレビで防犯評論家(だったか忘れましたが、こんな肩書きでした)の方が淡々と、「こういった事件に巻き込まれないためには、もし在宅でも怪しいを思ったら、不在としてまた配達してもらうのも良い手です。」と言うようなことをおっしゃっていました。「えぇぇっ、それはきついでしょ。」と私は思ってしまいました。

 信用のコスト、と言う問題だなあ、と思いました。こういう事件が起こらなければ、在宅なのに、不在を装って再度配達させる、なんてバカなこと誰もがおかしい!と言うでしょう。しかし一旦こういう事件が起きてしまった(要するに宅配業者の信用が損なわれた)以上、こういう対応をとることも社会的に有り!と言うことになってしまいました。世の中がいかに「信用」というもので、コストを抑えて回っているのかを改めて考えさせられたのです。何事も無ければ、つまり信用ベースで物事がうまく回っているときにはやらなくても済んだことが、一旦信用ができなくなってしまうとそれを補うために余計な作業が一杯発生してしまう、ということです。

 我々の食品業界にも似たようなことが起きています。産地偽装を起こした企業があれば、これを防ぐために捜査する部隊がお役所に作られるし、トレーサビリティーの義務も違った意味で強化される。また事故米を不正に流通させた業者がいれば、お米全体の流通そのものを見直し、さらに規制・監視を強めようとする動きが出てきている。賞味期限を誤魔化した企業があれば、賞味期限について世の中は神経質とも言うべき絶対論がはびこり1日たりともこれを間違えたらとんでもない、というような世の中になっている。

 私はこういった対応策がムダである、とは言っていません。しかし信用ベースで回っていた世界があれば、こういうコストは必要なかった、と言いたいのです。信用、これを失ったのは自分たちなのですから、これが問題なのですが何ともやりきれない気持ちです。なぜならば、こうやって目に見えないコストが確実に発生しているのですが、これまでと比べて何がお客様のために進化したか、喜んでもらえるようになったか、といえば過去と変わっていない、と言うことなのです。今までやらなくてすんでいたことを、やらねばならなくなった、と言うことだからです。

 当社の創業者の座右の銘は「信用こそ最大の財産」でした。これまで「それはそうだよな。」くらいの軽い気持ちでこの言葉を受け止めていました。しかし実はやはりこの「信用」と言うものは何モノにも替えがたい重要なものであることがじわじわとわかってきました。世の中がこの「信用」と言うものでどれだけ円滑に、どれだけ余計なコストを払わずに回っていることか、すごいことだと思います。また目には見えないけれども、この「信用」があることによって、すごく世の中は豊かになっているのだと思います。

 金融なんてその典型でしょうし、商売も全て信用がベースです。契約書で縛れることなんてホンの僅かですから。でも実は家庭生活においても、この信用って本当にいろいろなところで生きているんですね。宅配業者さんから何の疑いも無く「ご苦労様!」とお互い笑顔で荷物を受け渡しできるってこと、これが当たり前でなくなる世の中っておかしいですよね。やっぱり人間社会のベースは、信用なんですね。だからこれを裏切っては絶対にいけないのだ、ということを再確認しました。

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コメント

お久しぶりです。

スーパーマーケットは、お客様を信用して、セルフ販売で、商品を提供しています。
今、この販売方法が崩れるのではないかと思う事件が多発しています。
お客様の不正行為のため、警備強化を進めるほど、余計なコストが増大、本来の役目である、お安く商品をご提供できなくなる。不のスパイラルが進行しています。
セルフ販売が命のスーパー従業員として、セルフが出来なくなるのではないかと思う毎日です。

何となく起きていることは想像できます。しかしそれがこれまでに比べても、相当ひどいことになっているのですね。
セルフ販売が成り立たなくなるほどの被害とは尋常ではないですね。
やはり一人一人の「人としての自覚」というものが失われつつあるのでしょうか。何とも寂しい話ですね。

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プロフィール

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株式会社はくばく
代表取締役社長
長澤重俊

1966年ひのえうま生まれの45歳。
東京大学ラグビー部卒。(本当は経済学部)
住友商事を経て1992年はくばく入社。
趣味はゴルフとワインかな?
今年のヴァンフォーレ甲府がJ1で大活躍することを心から期待しています。